【コラム】事業承継の注意点。遺留分がもたらす問題に対処する方法は?

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【コラム】事業承継の注意点。遺留分がもたらす問題に対処する方法は?

中小企業の事業承継は、M&A、事業再生案、相続などさまざまな問題が発生するリスクを含んでいるので、事業主は事前に弁護士事務所にどうしたいのかを依頼しておくべきです。今回は、中小企業の事業承継のなかでも、企業の相続について説明したいと思います。

遺留分が企業の経営を阻害する

事業承継として、生前贈与や遺言の作成といった準備を進めている経営者も少なくないでしょう。しかし、こうした企業の相続を行う上で忘れてはいけないのが、「遺留分」と呼ばれる制度の存在です。この制度の対策を忘れると、相続が行われた後で思わぬ問題が発生してしまう可能性があります。中小企業にとっては、経営にまで影響を及ぼす重大なリスク要因にもなりかねません。

遺留分とは民法第1028条の規定によって、被相続人の配偶者や子ども、孫といった身近な範囲の推定相続人に対して、分配される遺産の最低限の割合を保障する制度です。
この制度が存在することで、推定相続人は会社を含めた遺産がすべて他人に渡って、経済的に困窮してしまうといった問題を防ぐことができます。

身近な相続人にとっては、遺留分は非常に助かる制度だといえます。しかし事業承継によって企業を受け継いだ後継者にとっては、これが経営の弊害になってしまう可能性もあるのです。

遺留分の権利を持つ推定相続人は、実際に相続された財産が保障された割合に満たなかった場合、贈与を受けた相手に対し、侵害された分の財産を請求することができます。これを「遺留分減殺請求」と呼びます。
もしも遺留分の条件を満たさない形での事業継承が行われており、推定相続人が遺留分減殺請求をした時は、財産の多くを引き継いだ後継者は請求に応じて適切に財産を分配しなければいけません。
事業を行うための資産を切り崩して渡さなければならなくなったり、財産である株式を分配することによって、企業の経営における意思決定権が分散してしまったりする可能性があります。

こうした原因によって、その後の企業の運営に影響を及ぼす可能性が出てくるのです。

遺留分の問題を回避するために、事前に必要な取り組みとは?

遺留分はあくまでも権利であって義務ではありません。そのため、該当する推定相続人は遺留分放棄という手続きをすることで、事前に権利を放棄することが可能です。
そのためには家庭裁判所への申し立てが必要であり、手間を要します。
メリットのない遺留分放棄のためにこうした手続きを行う人はいますが、事前の対策としては決して有効であるとはいえません。
そこで、平成21年3月に施行された「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、円滑化法)」の留意分に関する民法の特例にかかる規定(法律自体は平成20年施行だが留意分に関しては平成21年施行)では、遺留分によって生じる問題に対応するための2点の内容が盛り込まれています。

一つ目は、「除外合意」と呼ばれるものです。円滑化法では、すべての推定相続人の合意が得られた場合には、生前贈与された企業の株式のすべて、もしくは一部を遺留分減殺請求の対象から外すことを認めています。

二つ目は「固定合意」と呼ばれる制度です。企業の株式の価額について弁護士や公認会計士が相当な値であるという証明を行い、その価額を固定します。その後は株式の価値が変動しても、遺留分として算出される株式の価額が変化することはありません。
固定合意によって相続前の遺留分の算定がさらに正確になり、事前の対策が行いやすくなります。ただし価額を固定する際にも、推定相続人の合意が必要です。

円滑化法の適用も含めて、遺留分の対策を的確に行うためには、法律の専門家である弁護士の協力を得ることがもっとも現実的な方法だといえるでしょう。
数多くいる弁護士の全がこうした相続や企業法務に関する問題を得意としているわけではありません。「同様の問題を多く取り扱っているか」「良い部分だけではなく、悪い部分についてもしっかりと説明してくれるか」「費用に関する説明が丁寧で、納得できる内容か」といった点に注目して、後悔しない弁護士選びを心がけましょう。

多くの中小企業にとって、事業承継はけっして頻繁に行われるものではありません。

慣れない準備の中では、重要であるにもかかわらず見落としてしまう可能性がある制度も存在しています。遺留分も、そんな制度であるといえるでしょう。
しかし、こうした対策が充分に行われなかったために、後に厄介な問題に発展してしまう可能性があります。こうしたリスクを未然に回避するためにも、早い段階から弁護士事務所に依頼することをおすすめします。それこそが、円満な事業承継を行うための確実な方法だといえるでしょう。

(記事提供/株式会社エスタイル)

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