知的財産は誰のもの? 改正特許法で示された論点を紐解く【コラム】

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知的財産は誰のもの? 改正特許法で示された論点を紐解く【コラム】

企業にとって、今ほど知的財産を重視する時代はない。知的財産を巡る争いは激しさを増して、国内外のライバル企業との間で紛争になることも決して珍しくはないようだ。
それどころか、社員から発明の対価を求められるなど、特許権を含む知的財産権の行方が揺らぎ始めている。発明は「会社のもの」という古びた認識は、昭和の時代の遺産なのか、改めて考えてみる必要がありそうだ。

知的財産権とは?

知的財産権制度とは、人が創造的につくりだした成果を一定期間、その創作した人の財産として認めようというものである。これは知的財産基本法で保護されている。
知的財産基本法で保護される権利は以下のように分類される
■特許権(発明の保護)
■実用新案権(物品の形状、構造又は組み合わせの考案の保護)
■育成者権(植物の新品種の保護)
■意匠権(物品のデザインの保護)
■著作権(表現の創作を保護)
■商標権(商品、サービスに関するマークなどの保護)
■その他の知的財産

知的財産権は、物ではなく価値ある情報を形にした権利といえる。情報という加工されやすい財産だからこそ、コピーされやすい特性をもっている。知的財産基本法によって創作者の権利保護は守られるのか、この問いはとても分かりやすい課題でもあった。

改正特許法の狙い

対外的な知的財産権の侵害には訴訟で対応すればいい。一方、企業で開発した発明は「誰のものなのか」という根本的な問いは難しい判断を迫られる。このような状況から開発した権利を巡り社員と会社が対立する事態は頻繁に起きていた。各企業がガイドラインを設け、適宜、状況に応じて対処していたのが今までの状況であった。この混乱を避けるため、2016年4月に改正特許法が施行された。
最大のポイントは「発明は会社のもの」にした点である。混乱に終止符を打った格好だ。ただし、発明をした社員を保護する規定も設けられている。不利な立場になりがちな社員に対しては、契約や就業規則の定めを前提に「相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利」を明記することで調整を図っている。

これまではまず発明者が特許権を取得して、その後、会社側が相当な対価を支払い、権利を帰属させるという流れであった。
これが改正法では、初めから会社が特許権をもつことにしたのである。さらに特許を受ける権利等を取得させた従業者(発明者)には、「相当の金銭」という金銭的な補償にプラスして、「経済上の利益を受ける権利」を提供した点も企業にとっては大きな意味を持つ。補償金額が莫大なものになるならば、それに見合うだけの待遇を与えればいいのだ。
改正された特許法は企業に有利なようにもみえるが、特許に関する契約条項などが存在しなければ、今まで通り社員がまず権利を取得することになる。また、対価についても発明者が不満をもってしまえば、会社との対立は避けらないと考えられている。そもそも改正特許法には企業の競争力を向上させるために施行された目的があった。

一見すると企業と社員の権利について住み分けができたような感じもするが、抜け穴も多数見受けられる。解釈次第では会社や社員に都合のいいように運用できる。
欧米では発明者個人に重きが置かれ、日本においては企業が最終的な主導権を握って特許権は与えられてきた。その距離を縮めることができる改正特許法ではあるものの、紛争の火種は残る。企業、発明者双方の調整に手間取るようならば、弁護士の活用は積極的にしたいものである。

(記事提供/株式会社エスタイル)

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