日系企業の海外進出の陰でクロスボーダー訴訟が増大か?【コラム】

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日系企業の海外進出の陰でクロスボーダー訴訟が増大か?【コラム】

企業活動のグローバル化が叫ばれて久しい。確かに海外で事業展開する動きは活発である。また、昨今の特徴として中小企業の海外進出がとても目立つ。さらには外国企業の国内進出も加速している。それに伴ってトラブルも増え、訴訟にまで発展するケースも珍しくはなくなった。このようなクロスボーダー訴訟が企業の経営基盤を揺さぶることもあるので、その傾向と対策を考えてみたい。

企業の海外進出の現状は?

外務省の「海外進出日系企業実態調査」によると、平成27年10月1日時点で海外に進出している日系企業の総数は,7万1,129拠点となり、過去最高を記録した。

※国別では以下の通り。
1.中国(3万3,390拠点)
2.アメリカ(7,849拠点)
3.インド(4,315拠点)
4.ドイツ(1,777拠点)
5.タイ(1,725拠点)
6.インドネシア(1,697拠点)

上記を見ると、中国進出が突出していることがわかる。これは隣国に位置するとともに、中国が巨大マーケットであることの反映でもある。総じてアジアの国々に日系企業の目が向けられていることも一目瞭然だ。

国内市場が縮小する中、海外に活路を見出す企業が増えていることを物語っている。恐らく今後も海外進出する日系企業はさらに増えるものと予想される。

クロスボーダー化する対立と紛争

日系企業の海外進出は目覚ましいが、それに比例してトラブルや紛争は必ず起きてくる。また、外国企業が国内で事業展開する場合も紛争リスクを伴う。さらには国内に拠点を構えていても輸出入や国際取引を行えば、国境を越えた潜在的な訴訟リスクを抱えることになる。

これが意味するところは、企業活動のクロスボーダー化が可視化できないところまで進んでいるということである。極論をいえば、どの企業も国際的な紛争に巻き込まれる可能性があるのだ。それが訴訟に発展すれば国境を越え裁判となる。これをクロスボーダー訴訟という。

クロスボーダー訴訟といってもその形はさまざまだ。特許や商標といった知的財産部門、外国企業を傘下に収めるM&A、取引先からの債権回収や現地法人における労務問題といった紛争トラブルは、国内同様、海外でも起き得る重要課題である。

国際法務を扱える法律事務所

外国企業や外国人労働者から現地の裁判所へ提訴があるとかなり厄介なことになる。それぞれの国の法令に精通した日本人弁護士は少なく、インハウスローヤーと国際法務を扱える法律事務所も絶対数そのものが少ないのだ。英文や現地語で取り交わされた契約書、進出先の行政機関への確認事項など、各国の事情に精通していないととても扱える案件ではない。

このクロスボーダー化する事案を見通して、現地法律事務所と提携する国内法律事務所も少なからずある。国際法務は、一国の法律事務所だけでは対応しづらく、国境を股にかけた弁護士、法律事務所が協働して行うことが求められている。企業間の国際紛争からクロスボーダー訴訟へと発展すると、長期化・泥沼化は避けられない。

トラブルの段階で対処できればそれに越したことはないが、ひとたび訴訟へと発展すると計りしれない損失を被る恐れがある。海外進出、または国際取引が盛んな時代だからこそ、国際法務に精通したインハウスローヤーや法律事務所の重要性が、より一層増していくだろう。

(記事提供/株式会社エスタイル)

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