M&Aはすっかりなじみの言葉となったが、大企業が主体となって実施される経済活動のイメージを持っており、どこか遠くの存在のように感じる方もいるのではないだろうか。しかし、必ずしもそのようなことはない。今では中小企業でも急増しているといわれており、どのような企業でもM&Aは起こり得る現象といえそうだ。
M&Aについておさらい
企業経営にとってM&Aはスタンダードな経営戦略といえる。株式会社レコフの調べによると、バブル経済の最盛期である1990年には754件だったM&Aが、2000年には1,635件まで増え、さらに2004年には2,211件まで急増し、年々、増加傾向にあるという。
M&Aといっても国内企業が対象とは限らず、海外企業を買収することもある。M&Aとは、合併、買収の略語だが、その手段にはいくつかの方法が存在する。
■株式交換・移転
■株式分割
■事業譲渡
■公開買付け
■第三者割当増資
上記で示した方法では、消滅する会社もあれば、存続する会社もある。M&Aを実施する目的はさまざまだが、経営基盤の強化と後継者問題を解決するために合併や買収を行うことが一般的であるようだ。
経営強化のためのM&A
M&Aは、合併と買収を意味するものだが、この2つの概念は似て非なるものがある。合併とは、2社以上の企業がひとつの企業になることを指す。その手法には吸収合併と新設合併がある。一方、買収とは、ひとつの企業が、対象企業の過半数以上の議決権を握ったりする。すなわち経営権を掌握することを意味している。
買収の場合、経営権を握られた会社はそのまま存続することが多いが、買収企業の傘下や子会社として事業を行うことになる。合併でも救済的な意味合いをもつことがあるものの、企業同士が対等な条件でひとつの企業として発足するケースに比べると、買収は譲り受け企業の経営強化に重きを置いた戦略といえるだろう。
ただし、合併・買収ともに、それぞれにおける業界での地位固めの側面が色濃く透けてみえる。譲渡企業にとっては不利な条件でM&Aが実施されることもあるが、破たんという最悪のシナリオを免れる点は、企業存続の最大のメリットといって差し支えがない。経営強化のためのM&Aとは、売上高の向上と事業拡大には欠かせない経営戦略といえそうだ。
事業承継のためのM&A
企業合併や買収は、企業シナジー効果を上げる積極的な経営戦略といえ、大企業から中小企業まで幅広く利用されている制度である。積極的な経営戦略のM&Aがあれば、消極的なM&Aもあるだろう。中小・零細企業では後継者問題が深刻だ。もともと小規模な事業所は、創業者であるオーナーが一代で会社を発展させてきたケースが目立つ。高度経済成長期に創業させた経営者が今、高齢社長となり、後継ぎのいない会社が増えているという。その切り札としてM&Aに注目が集まっている。
親族の後継ぎがいなければ、幹部社員への継承も検討課題であるが、適材適所にそのような人材がいるとは限らない。オーナー社長としては一代でつくりあげた会社は永久に存続させたいとの思いが強いものである。そこで外部企業に会社を譲渡してオーナー社長のつくりあげた会社のDNAを維持させたいと考えるわけだ。
この事業承継のためのM&Aは、小規模企業では必要不可欠な制度になりつつある。いずれにせよ、M&Aは企業規模に関係なく利用拡大が進んでいるため、検討の際は専門家への相談は避けられないと思っていいだろう。
(記事提供/株式会社エスタイル)